Hermes 世界で愛されるブランドの歴史Vol.1-①


ラグジュアリーブランドとは「歴史的な背景とオリジナリティを持ち、そして美しく日常を凌駕したもの」と定義され世界中の人々を魅了し続けています。BACKSTAGE TALKではパリで生まれたエルメスやルイヴィトンにはじまり、ミラノのグッチやロンドンのチャーチまで、これからも究極の憧れと同時に定番として使い続けたいエターナルなブランドストーリーを紹介していきます。
初回はブランドのなかのブランドと称されるエルメス。

パリを代表する馬具職人

ティエリー・エルメス

エルメスの歴史は1837年に幕を開けます。19世紀は今とは異なり、交通手段に馬車が用いられていました。貴族たちはステータスのひとつとして馬車を装飾したり、馬を美しく見せるためには財を惜しむことはしませんでした。21世紀になった今では、セレブリティ達のインスタグラムお馴染みのスーパーカーのような存在です。

創業者となるティエリー・エルメスは、馬を装飾する革職人としてパリのランパール通りに工房をかまえ、ここから世界中に愛されるエルメスというブランドがスタートします。ティエリーの職人としての腕は多くの顧客達に知られるものでしたが、飛躍のきっかには当時皇帝だったナポレオン3世御用達の馬具職人となったことが挙げられます。さらには1900年に開催されたパリ博覧会に出品した鞍が銀賞を受賞し、名実ともにパリを代表する馬具職人の道を駆け上がったのです。

当時、エルメスの馬具は他と比べてセンスが良く、多くの貴族や豪商が手にしたがったと言います

親子で紡いだクラフトマンシップ

出典:L’HISTOIRE PARL’IMAGE

息子でもある2代目シャルル・エミール・エルメスは、父の果たせなかった夢、そうパリ万博で金賞を獲得するために日夜研鑽を積みます。
この親子で紡がれたアイデンティティこそが、今もエルメスをエルメスたる所以とするクラフトマンシップなのです。

言葉では尽くせない努力の甲斐があってシャルルは1878年に開催されたパリ博覧会に出品した鞍でついに金賞を受賞します。
これを機に現在のエルメス本店があるフォーブル・サントレノ通りに製造、販売の拠点を移すのです。
彼の名声や品質はパリを遥かに越え、世界中の王室、セレブリティ達からのオーダーを受けるまでに発展していきました。

自動車の時代が到来

パリを、世界を代表する馬具工房となったエルメスですが、時代の流れが倒産の危機に追い込みます。自動車の登場です。

そもそも自動車自体は19世紀後半には販売を開始していました、20世紀に入ると世界最初のレース、それもフランスで開催されたりと一気に市民権を得ていきました。もはや馬具が必要ではない時代の足音がすぐそこまで来ていたのです。

エルメスの窮地を救ったのはファッションだった

窮地に立たされたエルメスですが、3代目エミール・モーリス・エルメスは馬具製造で培った技術を生かし大きな事業転換を目指します。そう、ファションの世界へ。

まずエミールが手がけたのはバッグでした。
1892年にエルメス初のバック、サック・オータクロアを発表します。

鞍を持ち運ぶように作られたサック・オータクロア

今では革製品といえばバッグやベルトなどファッション製品を思い浮かべる方も多いかもしれません、しかし馬具製品の名匠であったエルメス家が異なった分野へ参入することは、きっと簡単なことではなかったと想像出来ます。クラフトマンシップに裏打ちされ高度な技術で生み出されたアイテムの数々は、その後大きな賞賛と評価を得ることになります。

もともと布が主体だった女性のファッション小物に革という主流を生み出したのです。今だにエルメスにはマーケティングという考えはなく、最高の技術で作れる最高の商品を世に送り出すだけだ。というポリシーはこうして育まれていったのです。

実は洋服に必要不可欠なあるパーツもエルメスが広めたと言われています。それは何かお分かりですか?ー答えは最後にー

第二次世界大戦とスカーフの誕生秘話

エルメスブランドの基礎を着々と築いていたエミール時代でしたが、不運にも暗い時代の足音が忍び寄ります。そう、1929年にはじまった世界恐慌。そして第2次世界大戦が追い打ちをかけるのです。

ヨーロパ中が戦火に包まれ高級品の革製品の販売が難しくなるなか、エミールは持ち前のアイディアとセンスを発揮して、今ではエルメスを代表するスカーフ、そして香水を立て続けに発表していきます。最高の品質を保ちながら手頃な価格で買うことの出来るスカーフや香水は、戦後の不況を乗り切るための大きな切り札となっていくのです。

View this post on Instagram

Infinisilk #HermesFemme

A post shared by Hermès (@hermes) on

エルメスを象徴するオレンジもこの時代に生まれます。たまたま戦時中に明るい色が敬遠され、残ったオレンジを包装紙に使ったところ、反響がありそのまま現在に引き継がれていくのです。

こうしてエルメス家は誰もがくじけそうになる逆境をフランス人特有の機知とクラフトマンシップでチャンスに変えていきました。

世界中の人達から愛されるようになったスカーフは、シルクの産地でもあるリヨンの業者が4代目ロベール・デュマ・エルメスにスカーフ技術を売り込み今の形へと昇華されていきます。

現在まで約1500種類が発売され、纏える芸術品として人々を魅了し続けています。そして、エルメスを代表する香水の「カレーシュ」もロベール時代の1961年に誕生します。 
この頃のエルメスは革製品に加えスカーフと香水を中心に展開をしていくこととなるのです。

答えは「ファスナー」
ファスナーをエルメス式と呼んでいた時代も。 

PR パリで誕生したスキンケアブランド「クレームシモン」