初の米国女性大統領最有力候補、エリザベス・ウォーレンの魅力に迫る


アメリカは、今度こそ初の女性大統領を誕生させることができるのか?今回は2020年に歴史的な瞬間をもたらす可能性を持つ候補者、エリザベス・ウォーレン上院議員にフォーカスします。知性溢れる実績と振る舞い、そして一般的な政治家の利己的なイメージを覆す、人間味のある彼女のあり方を知れば、あなたもきっと彼女を応援したくなるはずに違いない。

半生は波乱万丈。貧困生活からハーバード大学教授、政治家に

エリザベス・ウォーレン上院議員が生まれたのは、オクラホマ州の自称「中流階級の底辺」とも言える裕福とは言えない家庭。しかも、父が病気で倒れてからは、家計はとても苦しく、エリザベスも13歳からウェイトレスを始めた。高校時代は成績も良く、課外活動も活発に行なっていたことで奨学金を得て大学に進学することとなった。

大学に進学するも、母の意向で早くに結婚し中退、第一子を妊娠からは専業主婦に。その期間も勉強への熱は冷めず、独学で大学に入り直し法律について学んだ。その頃、第二子が生まれるが、夫とは離婚。数々の大学に移り、最終的にハーバード・ロースクールの教授として教鞭を執ることとなる。これは史上初めて公立大学法学部を卒業した、ハーバード大学法学部の終身雇用教授であった。

政治歴は短いものの、実績あり!フレッシュさへの期待

ハーバードの教授として実績や自身の分野における文献の引用数の多さから見ても、彼女が頭脳明晰であることは明らかで、歴史的な不況を生むきっかけとなった2008年のリーマンショックの後には、オバマ前大統領の元で不良資産救済プログラムに関する議会監督委員会メンバーの議長を務めた。

政治活動自体は2012年からで、政治家としての歴は思いのほか浅い。実はこれが功を奏し、2016年に民主党代表として大統領選に挑んだヒラリー・クリントン前国務長官のように過去をあら探しされても、ミスや発言などの材料が比較的乏しく、また凝り固まった政治の悪しき習慣を打破できる新しさも期待される存在として認識されるようになる。

子供の頃に貧困を経験。企業よりも市民にフォーカス

父の病気以降、貧困生活をしていたエリザベスは、他の白人富裕層出身の候補者とは対照的に、企業の利益よりも、まず市民への還元にフォーカスしている。今回の選挙戦では、国民皆保険や公立大学の無償化、大型のテック系企業への課税等を挙げている。大企業からの援助を受けて、言いなりになっている他の候補者の様子を受けて、彼女の選挙寄付金は全て一般の個人からに絞っている。大統領選は寄付金の額が、勝敗を大きく左右するため、これはかなり大きな賭け。だからこそ、彼女の強い信念が伝わる。

人の心を掴む、実直でユーモアのある人柄と巧みなスピーチ

12月に行われた候補者同士のテレビ公開ディベートでの印象的な一場面。司会が「あなたが当選すれば、史上最高齢の大統領になりますが?」とアプローチされた時、間髪を入れずにエリザベスはこう答えた。「それに、私は史上最年少の女性大統領にもなるわ」。この回答に司会は思わず笑顔を浮かべ、観客は大歓声で湧き上がり、翌日にはニュースやSNSで動画が飛び交った。こんな軽快さがあるのが、彼女のスピーチの特徴。さらに彼女のスピーチは、ライバルのジョー・バイデン前副大統領と比べても説明が明確で、多くの人にとって分かりやすい。

彼女は、他の政治家が避けるような大企業や政治の闇に対する批判も、怯むことなく繰り広げる。しかし、自分のディベート中に同胞でありライバルである他の候補者についての批判をすることは滅多にない。昨今の選挙戦では、ライバルを蹴落とすために自分のアピールよりも、ライバルへの批判を列挙することが常套手段として行なわれているため、このスタンスが彼女の姿勢は誠実さを浮き彫りにさせることになっている。

そして、人の心を掴むエリザベスのスピーチは、彼女が大統領に欠かせないカリスマ性を持っていることを伺わせている。

人に共感することのできる、1人の心優しい女性

彼女が他の候補者と比較しても特別にユニークなことがもう1つある。それは、彼女の優しさだと筆者は考えている。ある日、登壇をしていたエリザベスに、1人の少女が質問した。「あなたは、自分が尊敬している人から、心ない対応を受けたことはありますか?また、その時どうしましたか?」。質問をしたLGBTQコミュニティに所属する17歳の少女は涙声で震えていた。エリザベスは少し考え、こう言った。「ええ、あるわ。私の母は、私と違う将来を描き、私が幸せな結婚をすることを望んでいたわ」。エリザベスは、少し涙を滲ませてゆっくりと語り出した。「(一部省略)でも、私の結婚生活はうまくいかず、努力もむなしく離婚をすることになったの。それを告げた時の、母の声は落胆に満ちていた。私がしたことは、正しかったかはわからないけど、心に従わなくちゃ。だって、人は常に自分を一番にケアしてあげるべきなのよ」。そしてその彼女の元まで歩み寄り、優しくハグをした。政治活動中に、感情や涙を露わにしたり、ここまで人間味のある政治家は珍しい。彼女はただの政治家ではなく、1人の女性として観客の心に残る瞬間を作り上げた。

ついに女性の大統領が誕生する可能性のある2020年の大統領選。他にも女性の候補者は複数いるので、誰が一番適任かを自分なりの視点で整理するのも面白い。もしかしたら、エリザベスのような力強い女性を知ることで、あなたのモチベーションを鼓舞してくれるかもしれない。女性の新しいロールモデルを応援しないわけにはいかない。