紙幣の肖像となった女性達 Vol.1 イギリス10ポンド 『ジェーン・オースティン』


広く愛され、尊敬の対象となる偉人達、なかでも代表格の到達点は紙幣の肖像。
国民が世界に誇れる功績を持ち、一般的によく知られている人物が選考の基準とされているなかで、実は女性が選ばれることがとても少ないことにお気付きでしたでしょうか?

世界で数えるほどしかいない女性肖像偉人たちの超越した女子力や知性を知る連載企画。
第一回目はイギリス10ポンド紙幣の肖像、ジェーン・オースティン。

ジェーン・オースティンについて

出典:janeausten

Jane Austen(ジェーン・オースティン)はイギリス文学を代表する小説家。

1775年12月16日にイングランド南部ハンプシャー スティーブントンに生まれ、父の卒業校でもあるオックスフォード大学に進学、レディング修道院女子寄宿学校で学びながら小説を書き始めます。
しかし処女作「第一印象」は父の協力を得て出版社へ持ち込むも断られてしまいます。

その後一家で田舎のバースへ引っ越すことになり都会生活からの変化にショックを受けるも、ここで小説家として大きな特徴を与えれることになります。そう、彼女の作品は全て田舎が舞台となり展開されるのです。

出典:visitbath

優しい家族に囲まれ愛を知る素朴な女性と紳士たちのラブストーリー、多くの困難を乗り越えながら、最後には誰からも祝福される結婚でエンディングを迎える。
ありふれた日常ながらも愛に溢れ、教養とマナーがしっかりと存在し、イギリス人の誇れる内面をしっかりと描ききっているのが特徴。

日本文学を代表する夏目漱石も「ジェーン・オースティンは心理を写し出す天才だ。平凡な出来事を心躍らせる文章に起こす技術は神技といえる。」と評価するほど!

1811年に匿名で「分別と多感」を皮切りに、長編小説6本と短編小説1本を出版し1817年7月18日にアジソン病により41歳の若さで短い生涯を閉じます。

イギリス新紙幣ただひとりの女性

没後200年の2017年、チャールズ・ダーウィンに替りジェーン・オースティンが10ポンド新紙幣で女性は彼女ただ一人選ばれました。

余談となるが50ポンド紙幣は映画「イミテーションゲーム」でもお馴染みのアラン・チューリング。
彼は第二次世界大戦中に今のコンピューターの原型を開発しドイツの暗号エニグマを解読して、終戦に向かわせるきっかを作った偉人。この逸話を知っている読者も多いのではないでしょうか。

さて、この10ポンド紙幣の目をひく可愛らしい肖像画は、大の仲良しだった姉のスケッチが基にされています。
家族愛が強いオースティンは、もともと小説を大切な人たちに読み聞かせて喜ばせたいという想いから書き始めました。

匿名で出版したのも きっと有名になりたいからとか、お金が欲しいからという欲とは無縁だったからに違いない。
“謙虚な心”はBACKSTAGE TALK読者も、しっかりと掴まえたい女子力を高めるためのエレメント。

出典:Lilly Library, Indiana University

紙幣に書かれている「I declare after all there is no enjoyment like reading!」は、オースティンの「高慢と偏見」から引用されたもので、ディナーが終わりミス・ビングリーが好意を寄せる兄の友人の本を手に「本以外は全部すぐに飽きてしまうの!」と言うセリフなのだが、みんなから無視されてしまう。
好きな男性の気を引けなかった彼女は、本を投げ出していつものおしゃべりに戻る。

そんな愛嬌たっぷりの1シーン、紙幣を手に取るたびに思い出せるイギリス人はきっと幸せでしょうね。

ジェーン・オースティン フェスティバル

出典:customgb

世界中から熱狂的なファンが集うジェーン・オースティン フェスティバル
毎年9月にイギリスのバースで開催され、街中を19世紀のコスチュームで練り歩くパレードや、舞台、朗読会、そして舞踏会の踊りを学べるプログラムまで、至れり尽くせりのこの10日間は19世紀にトリップした気分に浸れるのです。

それもそのはずイギリスの摂政時代(国王ジョージ3世に摂政がおかれた1811~20年の時代)を世界最大のフェスティバル。

出典:xyuandbeyond

開催地のバースはもともと貴族の避暑地として栄え、ジョージ3世時代の優雅な雰囲気が色濃く残る街。

この時代の建造物の特徴は、知的な装いにあります。左右対称で直線的なデザインはジョージアン様式と呼ばれ、保存状態も良いため街全体が1987年に世界遺産に登録されました。

ジェーン・オースティンは1801年から1806年までバースで暮らし、街での生活を描いた彼女の作品の多くが、この時の体験をもとに書かれています。

編集部オススメの映画

オースティンの作品は19世紀を美しく描き出す世界観や、人柄が反映された優しい物語、そしてイギリス人が誇れる気質が織り込まれていることなどから沢山の映画化がされています。

今回はそのなかから編集部オススメの1本を紹介!

1811年にオースティン初の長編小説として出版された「分別と多感」を原作に描かれた本作は、エマ・トンプソンが主演。
彼女は脚本も担当し第68回アカデミー賞で脚本賞を受賞というスーパーウーマンっぷりも発揮。

いつか晴れた日に(1995)

STORY
19世紀初頭イングランド南東部のサセックス州から物語が始まる。
貴族の夫を亡くした彼の妻と3人の娘は、先妻の長男家族により私園を追い出されることに。親戚や地域の権力者の力を借り、どうにか次の住処を見つける。
以前とはうって変わった慎ましい生活だが、持ち前の明るさとひたむきさで日々を彩っていく。そこは避暑で訪れた貴族たちが訪れる場所であり、彼らと娘たちの恋は必然のように花開いていくのだが…。

この映画はとにかく19世紀イギリスの優美な世界が全て詰まっていて、時間の流れが甘く蜜のように感じることが出来るはず。
日差しが気持ち良い日曜の昼に、紅茶をお供に見たい1本ですね。