イラン女性のサッカー観戦解禁!映画で知る「女性の不自由」


2015年9月、国連は地球をより良くするための「アジェンダ2030」を採択し、「SDGs(Sustainable Development Goals)」のなかで5つ目の目標として女性の不平等を是正することを掲げている。

2019年10月11日、イランの首都テヘランで全ての女性にとって、最高にハッピーなできごとが起こった。この日は、2022年ワールドカップ予選が開催。1979年の革命後、初めて女性がサッカースタジアムで観戦することが解禁されたのだ、40年の歳月を経て。

バックステージトークではイラン女性の観戦解禁を祝し、今回は日本から7500km離れたこの国で一人の少女が不平等に翻弄される映画「ペルセポリス」を紹介。世界に根強く残る不平等を知るきっかけになって欲しい。

マルジはおてんばな普通の女の子。それが当たり前のはずだった

ストーリーネタバレあり

1978年、主人公マルジは普通の少女時だった。ハンバーガーのような欧米の食生活に親しみ、スニーカーを履いて、ブルース・リー等のアクション系映画スターに憧れていた。おてんばな女の子の普通の幸せな生活。

それが革命前のマルジの少女時代だった。しかし、そんな普通の生活を営む彼女の街では、すでに打倒国王を謳うデモ行進が始まっていた。マルジの運命が変わる瞬間は、すでに彼女のすぐそばまで近づいている、、、。

革命が起こり、叔父さんのヒーロー話を聞くも、最後は、、、。

1979年、事件は起こった。デモ行進の最中、青年が1人射殺され、それを気に全てが動き出した。国王が放送を流し、街に飾られた像は倒され、革命のヒーローたちが釈放された。彼女の叔父も帰宅し、マルジに彼の半生を語った。しかし、新しい政府によって叔父は再度、逮捕。最後にマルジに面会し、彼女を実の娘のように愛おしく誇らしく思っていることを告げ、処刑されてしまう。

戦争勃発!女性の美を制限する日々が始まる。

革命から1年した頃、イランイラク戦争が始まり状況はさらに悪化。男性は戦争で戦うことが天国へ行く道と教えられ、女性はヒジャブの着用が義務化、化粧も禁止される。アメリカの音楽を聴くにも密売を頼り、アルコールは密造して手に入れていた。徐々にイランの国力は衰退し、スーパーでは食べ物が並ばず、医療は十分に施されなくなっていた。

そんな国の変化に対して授業中に異議を唱えたマルジは学校から注意される。そして、マルジの母は、活動家の女性が辿った悲惨な末路を思い、安全のために彼女をウィーンに送った。

家族と離ればなれのウィーンでの暮らし。自由のはずが、、、。

しかしウィーンでの暮らしは、端的に言って散々だった。母の親戚は、マルジの到着直前に彼女をキリスト教徒の寄宿舎へ送る。そこでも反抗的な態度をとったマルジは様々な場所を転々する生活を余儀なくされる。ようやくできた友人たちは、休暇中には家族の元へ帰ってしまい、孤独感を募らせてゆく。そんな中、運命の恋を見つけ全てがバラ色の生活を送り始めた、、はずだったが、その恋もあっけなく終焉し路頭に迷うことに。ホームレス生活を続け、最終的にイランに帰ることになる。

里帰りをするも、やはり自由は制限。そしてまたヨーロッパへ。

帰ってきたマルジはうつ病と診断され、最初は何も手につかなかったが一念発起して大学に進学。ダンスパーティーで、大学で気になっていた男性と近づき交際を始めた。しかし、男女で外で会うことは禁止されているる世の中、限られた選択肢、結婚の道を選ぶ。しかし一年で結婚は破綻。こうしてヨーロッパへ戻ることになる。今のイランは、彼女のいるべき場所ではない、それが彼女と家族の決断だった。

イランは元々は教育水準が高く、歴史と文化に富み、そして女性の政治家が多く活躍する素晴らしい国として知られていた。不運にもそんな素晴らしい国は、革命とと共に一変する。特にイランに住む女性たちにとっては大きな影を落とすことになるのです。先日のサッカースタジアムでの観戦解禁は、そんな彼女たちの権利を取り戻す活動をついに前進させた。これから先、さらに女性の権利に対する活動が前向きに行われ、1日も早くマルジのようなおてんばな女の子たちが、自分たちの人生を謳歌し、心のままに自分の美を表現できる日が、訪れるよう心から祈りたい。

ペルセポリス [DVD]

2007年カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品審査員賞受賞。イラン出身パリ在住のマルジャン・サトラピ監督自身による自伝的同名グラフィック・ノベルの映画化。1970~1990年代の混迷するイランを舞台に、主人公マルジの半生と3代に渡る母娘の愛情を涙と笑いを散りばめながら描いた感動作!

Oricon」データベースより